「愛」のある対応 ~ 母が「安心」できる接し方 ~

①同じ話でも、初めて聞いたように何度でも聞く
極端に短期記憶が損なわれ、葛藤や自己嫌悪に陥っていく時期であり、もし自分が母だったらつらいだろうな~という「立場の変換」を行い、愛のある対応をする。
同じ話をある程度聞いた後に、認知症の人の、「意識を変える」ことが大切。

②忘れて思い出せないことは、混乱するので聞かない
母に向かって話す相手の表情から、試されていることやバカにされたことが分かると、自尊心が傷つき落ち込む。例えば、「私のこと分かる?」、「名前は?」などと母が質問されている場合、「母が混乱しますからやめてくださいね」と、ハッキリ断っていた。

③すべてのことを否定しない
短期記憶が消失したことや、作話、異食などに対しては、母にとっては意味のあることだと認識して、それを受け止める。この場合、危険なことが起こらないように、周囲の環境を整えておくことも大切。

④失敗した後に落ち込ませない
本人が失敗したと認識できることや、トイレに間に合わないことなどに対しては、母の自尊心に配慮して処理することが大切。そのための環境を整えることや、介護者自身が自分の心をどのように操るか、いかにプラスの心にチェンジするかが求められる。

⑤悲しい思いをさせない
だんだん物忘れがひどくなり、自分を責めたりする時期では、自分がいろいろなことができなくなっていくことへの葛藤や、自己嫌悪に陥ることがあります。こういう時期こそ、笑顔や言葉、しぐさなど、「愛」のある対応をすることで、悲しい思いをさせないことが望まれる。

➅母が「幸せ~!」と思えることをする
好きな食べ物などを渡す時には、「愛してるよ~!」、「大好きだよ~!」という思いを伝える。母が喜び、笑顔になれる工夫をすることで、母に「幸せ~!」と思ってもらえるようにする。

⑦生きていて良かったと思えることをする
認知症が進む中、物忘れから自分は大丈夫かと不安になり、家にいては皆に迷惑をかけるのではないか?という葛藤が生じて、自分の行き場がないような焦燥感に襲われたりすることがあります。そんな時こそ、手を握ったり、ハグをするなどのスキンシップをとることで、母を大切に思っていることを伝える。

⑧母が「安心」できる環境をつくる
認知症を患った人は、不安、焦燥感、不快感、身体不調、ストレスなどが強く表れます。そのような時は、ゆっくりとしたテンポで声のトーンを落とし、母の言葉や表情などをしっかり確認するなど、注意を払います。適度なスキンシップをはかることで、安心できる環境をつくる。

⑨冷静さが保てない時は、その場を離れて気分転換する
母の認知症にまだ慣れなくて、その対応に戸惑っていた頃のこと。感情のコントロールができなくなった妻のmasaがやっていた「その場を離れる」こともいいんだよ、というこの方法を家族みんなで申し合わせた。
顔の表情を読み取る能力は残っている認知症の人には、厳しい表情を見せないこの方法はいいですね。

「愛」のある対応とは、母が「安心」できる「笑顔」「言葉」「仕草」で接すること。
認知症になった親の気持ちをどこまで理解し、どう向き合うのか? 「立場の変換」をしながら、認知症の親と接することが、介護する私たちの成長につながり、喜びも感じられることを、ぜひ知っていただきたいと思います。(masa)