ヒトは見たものになる

年齢というのは不思議でね、
人間というものは、
「見たものになる」ーーー
つまり、ヒトは歳をとることを「見ている」から歳をとるのだ。
そうそう、こんな話を聞いたことがある。
昔オオカミに育てられた少女がいたそうだ。
少女は人間に保護されたときには、百歳くらいだということが分かった。
百歳の少女というのだから、
人間社会では超長寿オバアサンのはずだが、
なぜか少女は、
百歳まで人間を見るチャンスがなかったために歳をとらなかったらしい。
しかし、人間を見て、歳をとることを知ってしまってから、
少女はあっという間に老け込んで死んでしまったという。
そんな逸話があるけれど、
人間というのは、
そういう存在であることは確かだと思う。

※篠原佳年著「魔法のくすり箱」(コボリ出版)より