「なんまん、なんまん、ありがとう」(2)

💖稲盛和夫著「心。」P046より ※画像は本文とは関係ありません。
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ことあるごとに私が口にしてきた
「感謝の言葉」(つづき)

これまでの人生を歩むなかで、感謝するべき場面に遭遇したとき、私の口をついておのずと出てくるのは、「なんまん、なんまん、ありがとう」という言葉でした。「なんまん」は「南無阿弥陀仏」がなまったもの。その言葉は、はるか遠い幼児期、父に連れられて行った「隠れ念仏」の席で教えてもらったものです。
隠れ念仏とは江戸時代、薩摩藩によって禁制に処されながらも、信仰を貫いた人たちによってひそかに守りつづけられてきた宗教的儀礼で、私の子どものころまでは、まだそれが風習として残っていたのです。
そのとき、父に手を引かれながら日没後の暗い山道を歩きつづけ、やっとたどり着いた山奥の粗末な小屋の中で、お坊さんが仏壇に向かって読経の低い声を上げていました。
私たちもその席に加わり、読経を終えると、お坊さんは参席者の一人ひとりに仏壇を拝むように促します。父にならって祈りを捧げる私に、お坊さんは「今日は遠い鹿児島市内からよく来てくれた」というねぎらいの声をかけてくれ、さらにこう言葉を継ぎました。

(つづく)

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出典:稲盛和夫著「心。」(株式会社サンマーク出版)
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